なぜ普通の医学生だった僕が医療×国際協力の道を志したのか?
はじめまして。
ゆうまです。
「命の格差がない世界に生きる。」
いきなりですがこれが僕の夢です。
ではなぜ僕はこんな夢を抱くようになったのか。
医学生である僕が、なぜ国際協力に興味を持ったのか。
今日は話していきたいと思います。
僕が「命の格差」にきちんと目を向けたのは、大学一年の春にラオスとタイを旅した時でした。
このときの旅は特別な思いから決めたものではなく、ただ「一人旅がしてみたい!」との思いで飛び込んだものでした。
それが自分の軸を定める大きなきっかけになるとは出発前には想像もしていませんでした。
現地に着いた初日。現地で暮らす日本人の方とお話しするなかで聞いたのは、「ここでは医師よりも祈祷師の方が信頼されている」という話でした。
日本に生まれ、日本で育った僕にとってその言葉は大変な衝撃でした。
現地の方々は家族の具合が悪い時、まず祈祷師を呼ぶのだそうです。
祈祷師の力に重きを置いているラオスでは、しばらくはお祈りの力で治そうとします。
しかしやはりお祈りの力ではどうにもならないものです。
そこでようやく家族は医者のもとへ向かいます。
ただ、祈りを捧げている間にも病気は進行しています。
時間が経ち、病気が進行していれば進行しているほど、医者にできることは少なくなります。
これはラオスに限らずどこの国でも同じです。
治療のための手段が無ければ、仕方なく患者さんは家に帰されます。
とは言っても家でできることといえば、おとなしく安静にしておくことくらい。
そのままその患者さんが亡くなる例も多いのだと言います。
そうなれば今度は家族は考えます。
「医者に診てもらったせいで悪化したんだ」とか、
「あのまま祈祷師を信じときゃよかったのに」とか。
こうしてますます医療への信頼度は下がっていくのだと言います。
これはほんの一例ですが、現実に今も残っている文化です。
これを聞いた時、私が考えたのは自分が生まれた時のことでした。
私は生まれた時泣かなかった子です。
その診断は「新生児仮死」というもの。
母子手帳にもしっかりと記されています。
なぜそうなったかと言えば、お腹の中にいる間に便を出し、その便の混ざった羊水を間違えて飲んでしまうことで苦しくなるという胎便吸引症候群によるものでした。
生まれてすぐに私はNICU(新生児集中治療室)に送られしばらく入院が続きました。
そこでの治療のお陰で僕は命をつなぐことができたと言えるかもしれません。
「あの時新生児科の先生に助けてもらったおかげで今がある。」
僕はそんな想いを持って生きてきました。
日本の周産期医療の充実度は世界でもトップレベルです、
日本の新生児死亡率は1000人あたり0.9人。これは世界で二番目に低い数字です。
一方旅の中で自分が出会ったのは医療以上に祈りに重きが置かれている国。
ラオスの新生児死亡率は1000人あたり28.7人。
実に約32倍もの開きがあります。
これを知った時、命の価値が等しいものだとはとても思えませんでした。
もちろんその背景には様々な要素があることでしょう。
ただ、救えたはずの命がその「文化」のために失われたこともあるかもしれない。
「文化」を否定することは誰にもできないのもまた事実です。
僕らに僕らの文化があるように、
彼らには彼らの文化がある。
ただもし、この国で生まれていたら今頃自分はどうなっていただろうかと考えずにはいられませんでした。
そんな時に浮かんだのが「命の格差がない世界に生きる」という夢でした。
命の価値は本来みな平等であるはずです。
ただ、実際にはそうとは思えないのが今の世界です。
非科学的な伝統医療が今なお残り続けている国。
お金がなければ満足いく医療を受けられない国。
病院や診療所が自分の周囲になく、何時間もかけなければ医療にかかれない国。
そもそも医療どころでなく、多くの人々にとって日々の暮らしすらままならない国。
日本とて他人事でいられるわけではありません。
確かに日本には国民皆保険制度があり、誰にでも平等に医療が行き渡ると考えられています。
しかし現実には、地域による医師の偏在や、医療へのアクセスのしやすさの違いなどの問題があります。
新型コロナウイルスの感染が広がる中、地方の医療体制が十分ではないということが取り上げられていたことも記憶に新しいところだと思います。
こういった問題の数々は、「命の格差はない」と、果たして本当に言えるのかと私たちに問いかけてくるものであるように思います。
今は医学生として学んでいる僕ですが、将来は医師として実際に診療を行うことで「命の格差のない世界に生きる」という夢に近づきたいと思っています。
それも日本にとどまらず、国際協力という形で海外での診療活動にも関わりたいとの思いがあります。
現地で暮らして医療に関わるのか、それとも日本を軸に派遣として海外で医療に従事するのか。
今はまだ明確に決めていないけれど、どんな形であれ自分が診療の現場に立つだけででできることには限りがあります。
遠隔で医療を届けること。
医療に関して情報を届けること。
この現実を知る人を増やすこと。
いろんな形で夢とする世界に近づいていきたいと考えています。
もちろん夢の実現は簡単なことではありません。
僕だけの力では及ばない部分がたくさんあるとも思います。
それでも、今の自分の気持ちと向き合い、この夢をとことん追求していきたいと思います。